スペイン・サラゴサ spain Zaragoza
サラゴサ
マドリッドやバルセロナから鉄道で約1時間半、アラゴン州の州都サラゴサの街は、画家フランシスコ・デ・ゴヤの出身と同じ州であることや、レアル・サラゴサのホームとして知っている方も多いのではないでしょうか。そんなサラゴサのおすすめ観光スポットの1つ目は、聖母マリアが現れたという逸話が残るピラール聖母教会。美しい内部では信仰の基礎となっている柱や、ゴヤの天井画をみることができます。全体を眺めるなら、古代ローマ時代に造られたエブロ川にかかるピエドラ橋からがおすすめです。スペイン全体の守護聖人としてこの地に祀られているため、毎年10月には目の前にある広場にてピラール祭が盛大に行われています。2つ目は世界遺産に登録されているアラゴン州のムデハル様式建造物。様々な時代の様式の調和が見事なラ・セオ(サン・サルバドール大聖堂)、八角形の鐘楼が印象的なサン・パブロ教会、イスラム時代の名残でありアラゴン王やカトリック両王の居城であったアルハフェリア宮殿の3つを指しています。そして最後は、カエサラウグスタ劇場。1世紀に造られたと言われるローマ劇場跡です。ゆっくり旧市街を歩いて、古代ローマ、イスラム、ユダヤ、キリスト教といった文明がこの地に残していった足跡と言える、見事な歴史的遺産を訪れてはいかがでしょうか。
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アルハフェリア宮殿に行く
スペインでもっとも美しいイスラム建築のひとつと称され、アルハンブラにも大きな影響を与えたといわれる宮殿です。
11世紀にアラゴン王国アルフォンソ1世が、イスラム君主の夏の離宮を改築したもので、アラゴンのムデハル様式建築物として世界遺産に登録されています。
入場してすぐにあるのが、イスラム時代に王座があった「金の間」(別名「大理石の間」)。建ち並ぶアーチにはイスラムの幾何学模様が施されて、息をのむ美しさ。その上階の「王座の間」は細密な天井装飾が見ものです。
こちらは1469年に結婚してスペイン王国を築くことになるカスティーリャ王国女王イサベルとアラゴン王太子フェルナンドが、あえて金の間の上に造らせた部屋だとか。なお、1492年のレコンキスタ完了後、この二人は法王からカトリック両王と賞賛されることに。
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アルハフェリア宮殿は現在、州政府の議会としても使用されています
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イスラムの礼拝所は馬蹄形アーチがメッカに向いています
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幾何学的な装飾が見ごとな金の間
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あえてイスラム時代の金の間の上に造られたカトリック両王の王座の間。天井装飾が見もの
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謁見待合室の天井に描かれたフェルナンド2世の紋章。ラテン語で“タントモンタ”と書かれています(“結果が同じなら手段は問わない”というアレクサンダー大王の言葉)
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ムデハル様式のアーチが美しいパティオ
聖母ピラール大聖堂を見る
サラゴサの旧市街に位置するスペイン最大級のバロック建築、聖母ピラール大聖堂。
西暦40年に12使徒の1人である聖ヤコブ(スペイン語でサンティアゴ)が布教中、柱(スペイン語でピラール)に乗った聖母マリアが現れ、教会を建てよと命じたという伝説を元に建設されたものです。
聖母マリアが現れたという柱の一部は大聖堂内に祀られて触れることでき、信者たちの行列ができています(大聖堂内は撮影禁止)。
サラゴサ近郊出身の画家ゴヤが制作した2つの天井画もあります。
聖母ピラール大聖堂のクーポラと鐘塔の全体を眺めるなら、エブロ川にかかるピエドラ橋がおすすめです。
夜にライトアップされると日中とは別の表情も楽しめます。
ちなみに聖母ピラールはアラゴン州だけではなく、スペイン語圏全体の守護聖母。
毎年10月中旬(12日前後の1週間)の聖母ピラール祭には、南米のスペイン語圏からも多くの観光客が訪れ、献花台には山のように花束が手向けられます。
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聖母ピラール祭では広場に巨大な献花台が現れます
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近くのサン・サルバドル大聖堂の後陣の壁に描かれたムデハル様式の幾何学模様。こちらも世界遺産
旧市街を街歩き&レストラン・バルで食事
サラゴサはローマ帝国初代皇帝アウグストゥスが建設した植民地を起源とする街です。
なかでも長さ約1km、幅約600mの長方形をした旧市街は、聖母ピラール大聖堂、サン・サルバドル大聖堂、古代劇場、ゴヤ美術館など観光スポットが集まり、街歩きの楽しいエリア。
レストランやバル(立ち飲み居酒屋)が並ぶエル・トゥーボ地区では、原産地呼称を認められたワインとともにアラゴン名物の仔羊のローストやタパス(小皿料理)を味わえます。
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旧市街の周りを走る路面電車。左は中央市場
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旧市街にはテラス席のあるレストランやバルも
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名物の仔羊は生後90日以下で臭みがないのが特長
サラゴサを拠点に足を伸ばしてみる
ロマネスクの名城ロアーレ城
サラゴサから北へ約100km。
ピレネー山脈とエブロ川に肥沃な土地が広がっていますが、その見晴らしのいい丘の上にあるのがアラゴンの3大ロマネスク建築といわれるロアーレ城です。
古代ローマ時代の砦を11世紀にイスラムと戦いに備えて改築したもので、城壁や兵舎のほか修道院や礼拝所が造られています。
位置的にローマやフランスの文化に近く、イスラム文化と交わることもなかったために、建築様式はシンプルな装飾と半円形のアーチが特徴のロマネスク様式。
イスラムとキリスト教文化が癒合したサラゴサのムデハル様式と違いを見比べてみるのも面白いかもしれません。
余談ですが、聖地エルサレムをめぐって十字軍とイスラム教徒との攻防を描いたリドリー・スコット監督の映画『キングダム・オブ・ヘブン』で、冒頭3分くらいに登場する城はこのロアーレ城です。
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丘の上に造られたアラゴンの3大ロマネスク建築、ロアーレ城
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実戦で使われることはなかったため、保存状態のいい城壁内
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ウエスカ平原のパノラマビュー!
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城内のサンペドロ教会後陣、厚い壁と半円形の窓が特徴のロマネスク様式
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キリスト教側にレンガがない時代、壁は切り出した岩を利用。納品した石工の刻印入り
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小さな窓はガラスの代わりに雪花石膏(アラバスター)が使われています
豪華な駅舎が残る国境の駅、カンフランク駅
のどかなピレネー山脈に突如として現れるカンフランク駅。
1928年にスペインとフランスを結ぶ鉄道の国境駅として誕生し、1970年に営業を終了するまでスペイン側の玄関口として使用されました。
現在、国際駅としては使用されていないことから、世界でもっとも美しい廃墟とも呼ばれています。
近年重要文化財に指定されたことで、将来的には駅舎内部を見学するツアーなども開催される予定です。
サラゴサからウエスカ、ハカの街を通って約150km。
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背後にせまる山々が印象的なカンフランク駅。長さが240mもある堂々とした駅舎
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戦時中、ここでヒトラーとフランコが密談したという闇歴史も。駅長はユダヤ人を通して逃したという逸話も
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不定期ながら内部を見学できる公式ガイドツアーも開催されています
巨岩をくりぬいたサン・フアン・デ・ラ・ペーニャ修道院はあの“聖杯”を守った場所!?
イスラム教徒がイベリア半島を支配していた時代、スペイン北部のピレネー山脈に逃れたキリスト教徒たちは小さな伯爵領や王国を築いて、国土回復の機会を待ちました。初期アラゴン王国の精神的支柱だったのが歴代アラゴン王の棺が埋葬されているサン・フアン・デ・ラ・ペーニャ修道院です(サラゴサからウエスカの街を通って約140km)。10世紀にできた小さな修道院を元に、時代ごとの建築様式で改装したもので、ロアーレ城同様にアラゴンの3大ロマネスク建築のひとつに数えられています。最大の見どころは、岩の下に造られたロマネスク様式の回廊。建ち並ぶ列柱の頭柱にキリストの誕生や最後の晩餐のレリーフが施され、ここで暮らす修道士たちが瞑想しながら歩いたといわれます。
この修道院は、最後の晩餐でキリストがワインを入れた“聖杯”が保管された場所としても知られています。映画『ダ・ヴィンチ・コード』や『インディー・ジョーンズ 最後の聖戦』で重要な役割を果たした聖杯については、ご存知の方も多いかもしれません。ただ、ヨーロッパにはこの“聖杯”といわれる聖遺物が200近くあり、眉唾なものが多いのも事実です。
“聖杯”がこの修道院に来た経緯をかいつまんで説明すると…
キリストがエルサレムのゴルゴダの丘で磔刑にかけられた後、1番弟子ペテロが聖杯をローマへ運び、以降歴代の法王が保管していました。3世紀にローマ帝国によるキリスト教への迫害が強まると、聖杯を守るためにウエスカ生まれの聖人がローマから祖国に送り、ピレネー周辺を転々したのちにこの修道院に辿り着いた、とされています。その後、聖杯は14世紀末にバレンシアに移され、現在はバレンシア大聖堂の聖杯礼拝堂に保管されています。
数多い聖杯のなかで、“これこそが本物”とされる理由は、先代法王のベネディクト16世や先々代のヨハネ・パウロ2世がバレンシア大聖堂でミサの際にこの聖杯を使用したため。ミサで使用⇒バチカンのお墨付き⇒やはり本物!となったからだそうです。
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岩の下の回廊。列柱には聖書の物語のレリーフが刻まれています
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列柱には聖杯伝説が生まれた最後の晩餐のシーンも
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岩の下の回廊
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修道士たちの居住区は地下。劣悪な環境で平均寿命は40代だったとか
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聖杯のレプリカ。本物(?)はバレンシア大聖堂に
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PとXのモノグラムでキリストを表すクリスモンはロマネスク様式の定番
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