バッチャン ~Bat Trang~
ベトナム北部の歴史ある陶器の村
バッチャン村もくじ
バッチャン村 概要
ハノイの旧市街から約15キロ、車で片道3-40のところにあるバッチャン村は、古くからレンガや焼き物生産で知られるハノイの伝統的な職人村です。村一帯が陶器生産に特化したまさに"陶器の村"。その品質の良さや美しさは古くから重宝され、今では贈答品や観光客にとっては北部ベトナムを代表するお土産に一つとして人気を集めています。
村自体は入場料などもなく、中心には陶器市場もあります。ハノイから半日ツアーやタクシーでも気軽にアクセスできることから、ハノイの人気観光地になっています。
バッチャン焼とは
1,000年以上の歴史があるバッチャンの陶器生産。土、顔料、窯焼き技術の他に物流や地理、その時々の情勢など様々な条件がそろって代々受け継がれる伝統技術とともにベトナムを代表する陶器ブランドとして発展してきました。陶器生産と一言に言ってもそう単純ではなく、技術・原材料・道具・生産体制などの要素が絡み、原材料加工/成型/乾燥/絵付け/装飾/焼成など様々な過程を経て完成します。職人手作りをベースとしたバッチャンではこの複雑な生産工程を村内で年齢や性別に基づいて分業、組織化して、閉鎖的な村の中で効率的に専門性のある陶器生産が受け継がれて一つ一つが焼き上がります。
そんなベトナムの伝統的村を体験し、お宝を探しにハノイから足をのばしてみてはいかが⁉
バッチャンへ行くべき理由
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"本場の豊富さ"
焼き物好きは必見!ベトナムで最も有名な焼き物として名をはせるバッチャン焼のまさに本場。ハノイのお土産屋や市場にもバッチャン焼を頑張って扱うお店はありますが、本場の品数、豊富さは比較になりません。ましてやダナンやホーチミンの雑貨屋でバッチャン焼を探すなんて、有田焼や備前焼を東京で買うようなものです。興味がある人もない人も探せば必ず好みの一品が見つかるはず!また、市場や個人経営のお店も産地直卸なので値段が安いのも魅力!
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"北部伝統の美しい村の雰囲気"
焼き物目当てに限らず、ベトナムらしいコミューンの雰囲気を味わうのにおすすめ!伝統的にベトナムでは一つの産業やギルドが密集して村を形成するのが特徴となっています。北部にはバッチャンの他にシルク村や線香村、版画村など様々あります。中でもバッチャンは焼き物以前にレンガや瓦などの建築資材の産地として発展したため北部ベトナムの伝統的雰囲気が濃く残っています。
また、かつては世界中に出回った名品の産地であるこの村は当然、歴史的に景気が良く裕福な家庭が多かったとされています。そのため子供の学業成就を願って文廟が建立されたりと陶器生産と一緒に格式ある村が発展してきました。
バッチャン村で何をする?
陶器市場でお気に入りの一品を探す!
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バッチャン村の中心といえるバッチャン陶器市場(Chợ gốm Bát Tràng)。ツアーではなく自分で観光する場合はここを目的地に設定すればいいかもしれません。いかにもベトナムらしい大規模な公設市場。しかし売っているものはすべて陶器という、焼き物好きにはたまらないまさに唯一無二の市場です。お土産探し目的であれば市場だけでも十分なくらい、お皿や花瓶、食器、壺さまざまな種類や柄、色の陶器が売られています。価格は決められているものもありますが、交渉が前提になっているお店も中にはあります。特に大量購入する場合はよりまけてくれることも!相場はハノイの雑貨屋やお土産屋さんよりも安いのも魅力です。価格交渉が苦手という方は日本語ガイド付きでツアーで訪れるのもおすすめの選択肢。解説など聞きながら適正価格で安心して目的の一品探しに集中できます!
焼き物工房で職人の技術を拝見!
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陶器屋さんがたくさん並ぶ表通りを一つ入るとそこは職人の世界。大規模生産や個人経営の工場が所せましと並び、昔から日々稼働している伝統的な風景を垣間見ることができます。工場によっては観光客向けにオープンにして見学や直販を行っている場所もあります。街の雑貨屋ではわからない、本場の雰囲気を味わいながら作りての顔がわかる品をお求めいただくというのも、バッチャンでお土産を探す際のおすすめの楽しみ方です。
結局カフェで一休み
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決して飲食店や休憩できる場所が豊富にあるわけではないバッチャンですが、村中心部の陶器市場の入り口の建物の2階部分におしゃれな陶器カフェがあります。陶器の展示販売とともにベトナムコーヒーやピザ、アイスクリームなどのファストフードも楽しめます。夏はかなり暑くなったり、鮮やかな焼き物に囲まれて情報量の多いバッチャンは思いのほか回っているうちに疲労がたまります。そんな時の一休みに!
バッチャン陶芸博物館
バッチャン村の南端にあるガイドブックにもよく載るこの奇抜な建物。バッチャンのあれこれを展示したり陶器ショップが入った複合ミュージアムとなっています。奇抜な建物は陶芸の際に使われる"ろくろ"をイメージしており、さまざまな建築のデザイン賞を獲得している実はすごい建物なんです。
基本情報
<営業時間>
平日:8:00AM~17:30PM
土日祝:8:00AM~18:00PM
年中無休(荒天時やその他特別な自由を除く)
<入場料>
・基本入場料:70,000vnd
(1階ショップエリア、2階焼き物展示スペース、4階飲食エリア)
・オプション入場料:追加90,000vnd
(3階展示スペース、5階アートハウス)
・陶芸体験:追加70,000vnd
(地下1階スタジオ)
見どころ
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1階: POTTERY WHEEL SQUARE
1階は屋外広場になっています。また建物内には陶器屋さんが数店舗入っていて、ミュージアムショップではありますがここも案外かわいくておしゃれな焼き物が売っているので、焼き物ショッピングには必見です!
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2階: SPACE OF BAT TRANG: PAST&PRESENT
「バッチャンの昔と今」と題された2階はバッチャンの陶器や歴史についての展示スペースとなっており、誰でも見学可能となっています。解説はベトナム語と英語表記のみですが歴史の変遷や陶芸に伝統的に使われてきた道具の展示、もちろん陶器の展示もあり焼き物好きの方は雰囲気だけでも楽しめるかもしれません。
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3階: LIGHT SCULPTURE ART EXHIBITION SPACE
3階は追加代金のチケットを支払った人のみ入場可能な展示スペースとなっています。焼き物とは関係ないですが、ベトナム人アーティストのBui Van Tu氏の個展となっています。このBui Van Tu氏がまさに天才で、木やその他の立体彫刻に光をかざして影を投影して作品を生み出すという、現在ベトナムで唯一(というか世界で何人いるのか?)この芸術を追求するアーティストです。追加料金ではありますがスタッフが付き添いで翻訳アプリを使って解説してくれるので、興味があれば追加で入場料をお支払いする価値ありです!
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4階/5階 飲食スペース + Art House
4階はデッキ席のカフェとレストランが入ってますが、決してにぎわっているわけではなく何より晴れた日は暑いです。一角の階段を上がると5階にアートハウスというコンセプトのスペースがあり、こちらは3階の追加チケットを購入した人が入場可能。お茶をサービスしてもらえます。
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地下1階: POTTERY WHEEL STUDIO
地下にはアートスタジオがあり、ここでは追加代金で焼き物づくり体験のワークショップをお楽しみいただけます。体験料も高くなく手作りのお土産ができるので、記念や雨天時の楽しみ方としてはいいかもしれません!
バッチャンの歴史
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バッチャンの起源
1,000年の歴史があるといわれるバッチャン村ですが、その起源ははっきりとはせず始まりは諸説あります。ただし正確な文字資料としてバッチャンが登場する前からこの地域での陶器生産は盛んにおこなわれたとされており、伝説上ではハノイの歴史と同じく1010年に李朝がニンビン省ホアルーからハノイに首都を移した際に、ホアルーの職人たちが今のバッチャンの地に良質な粘土を見つけて定住して歴史がスタートしたとされています。
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世界中に広まったバッチャン最盛期
陶器以前に焼成レンガの産地として知られていたとされるバッチャンですが、15世紀になると陶器に文字が記されるようになりバッチャンの名前がさらに広まりブランドとして確立されていったことが示されています。出土品からは王朝への献上品の他にも庶民向けの焼物や仏具などより幅広く民間に広まったことがわかります。
さらに、中国・明朝の海禁令によってそれまで広く流通していた中国陶磁器が出回らなくなり、その穴を埋めるように東南アジアの陶磁器が流通するようになりました。バッチャンもその一つです。その後の欧米諸国の進出とともにベトナムが貿易港として発展し、バッチャンが紅川沿いの物流の便が良い場所に位置していたという点も功を奏しました。それまでの国内市場から一気に海外市場向けにも出回るようになり、バッチャン焼は16世紀ごろに最盛期を迎えます。
日本では室町時代から江戸初期にかけて"安南焼"と称されるベトナム北部地域で生産される陶器が人気を博しました。その多くがバッチャンで生産される陶器だったとされ、今はバッチャン焼の象徴の一つとなっているトンボ柄は当時日本でしか流通していなかったとされることから、日本の特注だったとされるお話しもあります。
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今のバッチャンの姿へ
やがて中国の海禁策が解かれ、ヨーロッパでも産業革命など情勢が変わり、そしてベトナムは100年続くフランス植民地化の時代に入ります。日本でも良質な中国陶磁器が再び重宝されるようになりバッチャン焼の海外需要は弱まっていきます。しかし、ベトナムの陶器の一大産地として国内需要を支え続け、次第に現代の家族経営の職人村の形態が確立されていきました。
かつては献上品として、そして今では引き続き国内需要にプラスして再び観光客にとってお土産やギフトとして人気を集めるバッチャン焼。歴史の奥深さを知ればよりお土産としての価値が上がるかもしれません!