1枚の写真から旅行をつくる。
【馬と旅する地の果てツアープロジェクト】

「旅行をつくる」と一口で言ってもその裏には、マーケティング・企画・仕入れ・商品化・販売・手配など、多岐にわたる仕事がある。多くの旅行会社がこれらを分業し、担当制で行っているなか、STWでは1人の社員が全てを行うスキルを持っている。STWが得意とする、“自らの感動体験を武器に旅行をつくる”とはどういうことか。【馬と旅する地の果てツアープロジェクト】について語る。


Profile

宮下 綾乃

2012年中途入社。アジアセクションにて販売・商品企画を担当。「旅の学校」の企画運営にも携わる。

「この絶景を商品化したいんです!」

「旅行をつくる」ために最初に行うのが、情報収集だ。

情報の集め方は、現地支店のスタッフに聞く、海外インフルエンサーの投稿をチェックする、各国のローカル情報誌を読む、本屋で絶景写真集などを読むなど、社員によって様々。

宮下が運命的な情報と出会ったのは、旅行会社向けに各国の魅力を発信するイベントのモンゴルブースだった。展示していた1枚の写真に目を奪われたという。

宮下 「広大な草原にたたずむ馬と白銀の山々が写っていて、ツーンと張った冷気や澄んだ雰囲気が鮮やかに伝わってくる写真でした。私の知っているモンゴルの景色とはまったく違ったのが印象的で、すぐに会社に戻って上司に『この絶景を商品化したいんです!』と直談判しました」

提携先の現地会社に確認すると、写真の場所はアルタイ山脈の一部、タバンボグド連山の麓であることがわかった。白銀の山は、氷河に囲まれたモンゴル最高峰のフィティン山。

当時のモンゴル旅行といえば、青空の下、緑の草原を疾走する乗馬体験がメインであり、広大な氷河を目指すツアーは存在しなかった。

宮下 「実現したら“日本で初めてのツアー”と言えるんだ、と考えたらすごくわくわくしました」

詳しく調べると、草原と氷河を同時に眺められるベストシーズンは、6〜8月のわずか3ヶ月間だけということがわかった。いち早く紹介したいという思いから、5月に視察、6月中旬に予約開始というスピード感で準備を進めていくことに。

早速現地ガイドと連絡をとり、宿泊場所や移動手段の候補を決め、具体的なツアー工程を組んでいった。

ツアー内容は、モンゴルの首都ウランバートルから、プロペラ機でカザフ民族の街に飛び、標高2000m以上の高地にある遊牧民の家にホームステイをし、片道5時間以上馬に揺られて氷河を目指すというもの。

相当ワイルドな企画だったが、ツアーの概要や予算、見込み利益、予約・販売までの計画を練り上げて上司にプレゼンすると、「面白そうだから現地を見に行っておいで」と応援してくれたという。

宮下 「このスピード感と大らかさがSTWらしいなって思います。担当者に情熱があって企画が面白そうなら、どんな挑戦でも認めてくれる」

宮下はすぐにモンゴルに飛んだ。

せっかく最果てに行くなら、豪華ホテルより電気もシャワーもないテント泊

実際に現地を見て回った結果、当初のツアー行程が変わることは頻繁にあるという。

当初はラグジュアリーなホテルに滞在することを考え、部屋の広さ、スタッフのホスピタリティなど細かく確認してホテルを厳選していた。しかし、最終的にそれらはすべて却下になったという。

宮下 「遊牧民に先導され、馬の背中から湿原や、碧く透明な川を見ながら目的地を目指したんですけど、その道中やあの写真の場所をいざ自分の目で見てみたら、あまりの美しさに感動してしまって…、この景色をずっと見ていたいと私自身が強く思ったんです」

現地視察中の一枚

夕暮れは金色に、夜は降るような星空、朝は抜けるような青空と、時間帯によって異なる姿を見せる絶景をすべて見てもらうには、中心街にあるホテルに戻るのではなく、テント泊こそ最善に違いない。

思い切って電気もシャワーもないテント泊のツアーに切り替えることを決断した。

馬とともに絶景を目指し、絶景の目の前でテント泊をするワイルドな体験は、STWにしか提供できないとびっきりの感動コンテンツになる。そう確信した宮下は、帰国するとすぐにPRに着手した。

現地での食事、テントの張り方など、旅の魅力が具体的に想像できるイベントを開催するほか、自社ホームページに宣伝ページを作成し、予約が入るのを楽しみに待っていた。

宮下 「こんな秘境ツアーに興味を示してくれるのは、自分と似た少し変わった方々だろうなと予想していました(笑)。冒険願望が強いけど、最近旅をしていない30代の男女の方が日々のストレス解放目当てに予約してくださるかなと」

しかし、実際は想像と全く異なる申し込みが入ったという。

「けっこう過酷かもしれない旅ですが大丈夫でしょうか?」

記念すべき最初の申し込みをしてくれたのは、小学生のお子さん、お母さん、お祖母さんの母娘三世代。

「けっこう過酷かもしれない旅ですが、年齢的に大丈夫でしょうか?」と心配する宮下に、母親は「夏休みに娘に色々な体験をさせたいので、この旅が良いなと思ったんです」と笑顔で答えてくれた。

それならば期待に応える自信は十分にある。0からつくり上げた渾身のツアーへと送り出した数日後、宮下のもとにメッセージが届いた。

『宮下さんのおかげで、最高な夏休みの思い出と、最高な自由研究の報告ができる、最高の旅になりました。馬に乗ってゆったりと目的地を目指すので、高齢のおばあちゃんも大好きな自然の景色を見ることができて、本当に喜んでいました。3世代でこんな絶景を見れるなんて思ってもいませんでした。本当にありがとうございます』

宮下 「このメッセージは嬉しすぎました。企画から商品化、PR、販売、手配まで全部自分でできるのは、STWに入社した人だけの特権だと思うので、ぜひ体験してほしいです」

どの旅行会社も未だ扱っていない世界の魅力を発掘する

STWのツアーはどこにも無いユニークなものばかり。それは、宮下をはじめとした好奇心旺盛な社員が、自らの感動体験を武器に「旅人」目線で旅行をつくっているからだ。

宮下 「手前味噌ですが、自分でつくった旅行に家族を連れてプライベートで行って、『あー、やっぱりこのツアー最高!』と満足して帰ってくることもあります(笑)。なので、自分が大切な人を連れていきたいのはどんな旅だろう?と考えるのがツアー企画のコツですね」

コロナをきっかけに旅行会社の未来を不安視する声もあがったが、宮下は0から旅をつくる経験があったからこそ、揺れなかったという。

宮下 「こんなにお客様に喜んでいただけて、価値ある旅を提供できる会社は、何があっても傾くわけがないと思っています」

STWの役割は、「航空券とホテルを売る」「旅行を手配する」のではなく、「どの旅行会社も未だ扱っていない世界の魅力を発掘し、いち早くパッケージツアーとして商品化する」こと。

「価値あるコンテンツを生み出す」というコンテンツメーカーとしての自負がSTWらしさである。