どの旅行会社も似通った旅になりがちなのが、カナダのイエローナイフで開催されるオーロラ鑑賞ツアー。そんな定番企画に、固定概念を打ち破る戦略で挑んだのが、【カレイド ロッジ ユーコン】プロジェクトである。オーロラが見える宿泊施設をつくるという奇抜なアイディアが生まれた背景やロッジ経営について語る。
2007年新卒入社。アメリカセクション責任者。北中南米のツアー販売・企画をマネジメントする。
2019年新卒入社。グループ会社であるツアーオペレーター部門にて旅行会社への企画営業を担当。
カナダは難しい国である。観光コンテンツとしての強みが「夏」に集中しているからだ。夏になるとナイアガラの滝は最多水量を誇り、カナディアンロッキーの湖は宝石のように輝き、バンクーバーではアウトドアが存分に楽しめる。
しかし、冬になると雰囲気は一変。滝は凍り、大雪で立ち入り禁止エリアが増え、青々としていた景色は白銀になってしまう。そんな厳しい冬の貴重な観光資源がオーロラだった。
鳥見 「多くの旅行会社がこぞってイエローナイフにある“オーロラビレッジ”に行くツアーを組んでいました。400人程度収容できる大型オーロラ鑑賞施設で、世界中から観光客が集まる定番スポットです。ただ、あまりに定番すぎて他社と差別化が難しいという課題がありました」
定番ツアーをSTWらしい感動体験にするにはどうすべきか。現地視察や、オーロラビレッジユーザーのリアルな声を聞くなかで、既存のオーロラ鑑賞ツアーの問題が浮かび上がってきた。
一般的なツアーでは、観光客はイエローナイフ市内に宿泊し、夜になるとホテルのバスやタクシーでビレッジに向かう。オーロラビレッジには、大型シャトルバスがひっきりなしに行き来し、施設内はアジア人旅行者で賑わっている。鑑賞時間は事前に決められ、たとえ後半にオーロラが出現しても、時間がきたら帰らなければならない。もっと見たければ延長料金を支払う仕組みだ。
大型施設だからこそ便利な点も大いにある。その一方、大量の観光客を効率的に案内するビジネスライクな雰囲気に改善の余地が見えた。
鳥見 「オーロラ鑑賞は一生に一度あるかないかの貴重な機会です。決して安くない旅行費用を考えると、時間を忘れてゆったりと最大限楽しんでほしい。でも、既存施設を使うと時間制限などでビジネスライクになってしまう。だったら、『オーロラが見えるロッジを自分たちでつくればいいんじゃない?』と、宿泊施設を自社で建設&運営することが決まりました」
こうして生まれたのが、宿泊型オーロラ鑑賞施設【カレイド ロッジ ユーコン】である。オーロラ観賞率90%のホワイトホースに位置し、一般的なオーロラ鑑賞ツアーにありがちの時間制限がないため、オーロラに遭遇できるチャンスも多い。
ロッジは全6室のみのアットホームな雰囲気で、ダイニングルームや敷地内のウッドデッキからゆったりとオーロラを待つことができる。
そんなカレイドロッジの運営責任者に抜擢されたのが当時入社3年目の小松崎だった。
小松崎 「入社当時からいつか海外赴任をしたいと言っていたので、カナダ行きは二つ返事でOKしました。でも実は私は英語がまったく話せないんです。カフェに行ったらI want coffeeしか言えないくらい。英語が話せず、社歴も浅い自分に現地責任者を任せてくれるSTWってすごいですよね(笑)。その期待に応えたいと強く思いました」
現地では、アルバイトスタッフ雇用や、ロッジ管理業務、予約対応など、日々大量の業務をやり遂げる必要があった。そのなかでも小松崎が特に力を入れていたのが、写真撮影である。
小松崎 「幻想的なオーロラをバックにした写真は、旅の最大の思い出の一つ。帰国して写真を見返したときに、表情が硬かったり、ピンボケしていたり、構図が悪かったりしていたら、一生に一度の思い出に傷がついてしまいます。一瞬のシャッターチャンスを逃さない。感動する旅をつくるため、私が現地でできる最も重要な使命だと思っていました」
赴任前はほとんどカメラに触れたことはなかったという。自分が納得できるレベルになるまで、空き時間を見つけては一眼レフカメラでの撮影を練習した。滞在客がSNSで小松崎の撮影した写真を投稿してくれたのを見つけたときの喜びは格別だったという。
STWのカナダ方面名物ツアーとして成長した【カレイド ロッジ ユーコン】。 成功の理由は、「オーロラが見える場所にロッジをつくる」という奇抜なアイディアだけではない。それがわかるのが、滞在客の口コミだ。
「ロッジのスタッフが日本人で、英語ができなくても海外にいるのに緊張感なくホッとできました」
「日本人常駐で、どのスタッフの方も親切にして下さり、一人で旅しているのを忘れるくらいでした!」
委託先の現地企業やフリーランスのガイドに、運営やツアーガイドなどを任せる旅行会社は多い。もちろん優秀な場合もあるが、ずさんな管理を行う企業や、小遣い稼ぎのためにコミッションを渡す店に案内する悪質ガイドも少なくないのが現実だ。
一方、STWは自前主義。世界各国に支店を持ち、日本のおもてなしや仕事のやり方を身につけたスタッフたちが高品質のサービスと安心感を提供している。
現地支店の運営やスタッフの雇用・教育には大きなコストや労力がかかる。それでも創業以来、世界中で支店づくりに注力してきたのは旅のクオリティを高め、感動を多くの旅行者に体験してほしいから。
カナダの【カレイド ロッジ ユーコン】のように、安心・安全な環境のもと、その土地の魅力を最大限体験できる旅をSTWは追求し続ける。目指すのは、「世界各国で顧客満足度No.1」。旅行者の立場になって旅をつくり続けていけば、必ず達成できると信じている。